繰り上げ返済する際の注意点

住宅ローンを組んでいる方は、繰り上げ返済をすることができますが、どんなメリットがあるのでしょうか?また注意点について解説します。繰り上げ返済したものの、後に後悔することがないようしっかり押さえておきましょう。

繰り上げ返済とは?

繰り上げ返済とは毎月返済している分とは別に、元金の一部、または全部を前倒しして返済することを指します。

元金が早く減るのはもちろんですが、その元金に掛かるはずだった利息もなくなるのがメリットです。

そして、繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。

毎月の返済額は変えず返済期間を短くするのが「期間短縮型」で、返済期間は変えず毎月の返済額を減らすのが「返済額軽減型」です。

同じ金額を繰り上げ返済した場合、期間短縮型の方が多くの利息を減らすことができます。当初は月々の返済額を少なくするために長期でローンを組んだけど、完済予定年齢が定年退職後になっているというような人に良いでしょう。

一方、返済額軽減型は返済期間は適正だけど毎月の返済額が多いと感じる人に良いでしょう。

いずれの場合でも、繰り上げ返済をする時期が早ければ早いほど、利息軽減効果が高いです。(※元利均等返済の場合)

ではどんどん繰り上げ返済した方が良いのでしょうか?繰り上げ返済する際の注意点を見ていきましょう。

注意点① 手元に残るお金が減る

借金=悪い事というイメージがあり、なるべく無くしたい(減らしたい)と思うのが人間の心理です。

しかし、投資の世界で「キャッシュ・イズ・キング(現金は王様)」という言葉があるように、病気やケガ、リストラなど何かあった時に対応できるのがキャッシュ(現金)です。

極端な例ですが、2,500万円の住宅ローン&現金0円の状態よりも、3,000万円の住宅ローン&現金500万円の方が家計として健全な状態と言えます。

住宅ローンは他の借金に比べて「低金利」であり、長期に渡り安心した生活を送りながら返済していくことを想定しています。

どんな場面においても予備や将来のために現金を残しておくことが大切ですし、まとまった資金ができたなら繰り上げ返済より資産運用に回す方が効率的かもしれません。

いずれにしても、「借金を減らしたい」「利息を払いたくない」という理由だけで、手元の現金のほとんどを繰り上げ返済に回すというのは、お勧めできません。

注意点② 団信の効果が減る

基本的に住宅ローンを組んでいる間は、団信(団体信用生命保険)に加入し、返済者が万一死亡・高度障害となった場合はその返済が免除されます。(※特定疾病で保障されるものもある)

万一の場合のことをあまり損得で考えるべきではないかもしれませんが、団信のことについても考えておいた方がよいでしょう。

例えば頑張って貯めた500万円を早期に繰り上げ返済に回した場合、同時に団信という保険の500万円が消えることになります。

もし繰り上げ返済後に万一のことがあり現金が必要となった場合でも、後から「やっぱり返して」というようなことはできません。

団信も長期に渡り返済していく想定の住宅ローンだからこそ、ほとんどの金融機関で借入時の必須条件となっているのです。

注意点③ 住宅ローン控除の効果が薄くなる

一定の要件を満たしていれば、ローンの支払い開始から10年間、年末住宅ローン残高の1%が住宅ローン控除として受けられますが、この間の繰り上げ返済にも注意が必要です。(※2022年度からは控除期間13年間、年末残高の0.7%)

安易に繰り上げ返済をして残債を減らしてしまうと、住宅ローン控除額も減らしてしまう可能性があります。

せっかく受けられる恩恵(節税)を自ら減らしてしまうことになります。

金利によっては繰り上げ返済を優先した方が得となる場合もありますが、他の注意点も踏まえると繰り上げ返済は住宅ローン控除後にするのが良いと言えるでしょう。

注意点④ 手数料が掛かる

フラット35やインターネット経由で繰り上げ返済をする場合、手数料無料のケースが多いですが、窓口や電話で手続きをした場合など手数料が掛かることがあります。

またそのような場合、結構な手数料を設定している金融機関が多いです。少額でも積極的に繰り上げ返済した結果、その手数料の方が損していたでは本末転倒です。

ご自身の金融機関の繰り上げ返済時の手数料について確認しておきましょう。

結局どうすれば・・・(まとめ)

ここまで繰り上げ返済のメリットや種類、注意点について解説してきましたが、結局どうすればいいのでしょうか?

するべきタイミングで自分に合った返済方法で行うことが大切だと考えています。

そして繰り上げ返済は今後のライフプランを考える上で、とても重要な鍵になります。

例えば・・・

・完済年齢が定年後だから、〇年後までに〇万円貯めて期間短縮型の繰り上げ返済をする。

・毎月の家計に余裕が無いから、ボーナスで〇年後までに〇万円貯めて返済額軽減型の繰り上げ返済をする。

・住宅ローン控除終了までに〇万円貯めて、終了後に〇割繰り上げ返済する。

というような感じでしょうか。目先の損得にとらわれず「何の為に」繰り上げ返済を行うかが重要です。

ほとんどの方にとって住宅は人生で一番大きな買い物と言えるでしょう。同じ買い物(住宅)でも借り方や返し方次第で、数百万円の差が出てくるケースもあります。

住宅ローンに関するアドバイスは、当事務所の個別相談より行っております。是非ご活用頂ければと思います。