企業型DCを見直しましょう

現在、企業型DC(企業型確定拠出年金)制度を導入している企業は5割を超え、会社員の5人に1人が加入していると言われています。しかし、運用割合を見ると約半数近くが定期預金や保険といった「元本確保型」商品を選んでいるという実態があります。

昨今政府が「貯蓄から投資へ」を呼び掛けていますが、この先もなかなか浸透していかないだろうというのはこの実態からも見えてきます。そこで今回少しでも企業型DCの理解を深め、正しい知識を持った上で運用する必要性を感じ記事にしました。

企業型DCって何?ということから、メリット・デメリット、運用商品を選ぶ際のポイント、手順などについて解説します。

企業型DCについて

確定拠出年金には「個人型」と「企業型」があり、個人型はいわゆるiDeCoと呼ばれるものです。個人型確定拠出年金は個人で掛金を拠出し個人で運用していく年金制度です。

いっぽう企業型確定拠出年金(以下企業型DC)は、企業が掛金を拠出し従業員が運用していく年金制度です。

加入できるのは、企業型DCを実施している企業に勤める厚生年金の被保険者で、積み立てたお金は60歳以降に「年金」または「一時金」として受け取ります。

企業年金には他に確定給付年金(以下企業型DB)といわれるものがあり、こちらは名前の通り将来給付される給付額が確定しているもので、企業が拠出・運用します。

※現在厚生年金基金は新規設立が認められず、既存の基金は解散か企業型DBへの移行が進んでいます。

会社員(第2号被保険者)の年金制度

企業型DBは運用が想定を下回った場合、企業は「退職給付費用」として追加で人件費を拠出し給付額を確保する必要があります。つまり企業にとってDBの運用リスクは大きく、個人が自己責任で運用を行なう企業型DCへの移行が進んでいるのです。

まずご自身の会社が現在どの退職給付制度を採用しているのか知る必要があります。というのも度重なる年金制度改正により、いつのまにかこの企業年金=いわゆる退職金となっているケースが大変多いからです。

また企業型DB・DCにはそれぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。

企業型DC・DBの主なメリットとデメリット

しかし企業にとって企業型DCは運用リスクを従業員に完全に転嫁できるため、効率が良いのです。

従業員はそのことを理解し、正しく運用していかなければなりません。

運用商品を選ぶ際の3つのポイント

では運用商品はどのように選べばいいのか。これについてポイントは3つあり、基本的にこの順番で見ていけば大丈夫でしょう。

①商品の種類

②運用スタイル

③信託報酬

一つずつみていきましょう。

ポイント① 商品の種類

まず運用商品を選ぶ際、「商品の種類」について決める必要があります。

具体的には、「株式」「債券」「預金」「保険」の中から選びます。

引用:iDeCo公式サイト

預金と保険は「元本確保型商品」と言われ、原則投資(拠出)したお金の元本が保証されます。

最も安全性が高い金融商品と言われる一方、ローリスク・ローリターン商品のため、資産を増やす投資商品としては魅力に乏しいと言えます。

企業型DCの大きなメリットとして、運用益が全額非課税になるという点があります。

これは通常株式で資産運用をして得た利益に対して約20%の税金が掛かりますが、これが掛からないという大変大きな税制優遇です。

元本確保型商品の利率は金融機関により異なりますが、ゆうちょ銀行が提供している「確定拠出年金定期預金(1年)」では、利率は0.002%です。

例えば、月2万円を年率0.002%で20年間複利で運用した場合、元本480万円に対して運用益は956円にしかなりません。企業型DCでの非課税効果はその約20%に対する約191円のみです。

さらに退職や転職などをした際には、企業型DCの資産を個人型DC(iDeCo)に移管するケースがあるかもしれません。

この場合、iDeCoに掛かる手数料は加入者本人が負担する必要がありますが、この運用益ではその際の手数料もまかなえません。

こういったリスクも考えると、株式や債券といった「価格変動型商品」を少しの割合でもよいので加えておくと良いでしょう。

ポイント② 運用スタイル

次に「運用スタイル」について考える必要があります。

投資スタイルは大きく分けて、「パッシブ運用」と「アクティブ運用」の2つがあります。

パッシブ運用はインデックス運用とも呼ばれ、市場全体の値動き(指数の値動き)と連動する成果を目指す運用スタイルです。

具体的には、日経平均株価やTOPIX、米国ならNYダウやS&P500などの指標があり、それらに連動した値動きを目指します。

いっぽうアクティブ運用とは、パッシブ運用を上回る成果を目指す運用スタイルです。

ならばアクティブ運用の方が良さそうと思ってしまいますが、あくまでも上回ることを目指しているということです。

市場平均を大きく超えるリターンが期待できるいっぽう、市場平均を大きく超えるリスクを負うこともあるでしょう。

そしてアクティブ運用の商品はパッシブ運用の商品に比べて、手数料(信託報酬)が高いのが一般的です。

というのも市場平均以上の成果を目指すのですから、その分優秀なファンドマネージャーが多く必要になり、人件費が掛かると考えればなんとなく分かります。

これらを踏まえ運用スタイルを考える必要があります。

ポイント③ 信託報酬

企業型DCでは個人型DC(iDeCo)と違い、毎月発生する口座管理手数料を会社が負担してくれます。

しかし企業型DCでも株式や債券などの投資信託を保有した際に「信託報酬」というものが掛かってきます。

信託報酬とは、投資信託を管理・運用してもらうための費用です。これは投資信託を保有している間ずっと発生します。

ただし、これは別途支払うのではなく「総資産額に対して何%」という形で毎日差し引かれます。

信託報酬は0.2%~2%程と商品によって差があり、上記(ポイント②)で説明したパッシブ運用の商品は低く、アクティブ運用の商品は高い傾向があります。

たかだか2%弱と感じるかもしれませんが、毎日差し引かれるものですので長期で運用すればする程その影響が大きくなります。

企業型DCのような長期で運用する場合、信託報酬が低い商品を選ぶことは鉄則といえます。

ちなみに預金や保険といった「元本保証型商品」には信託報酬は掛かりませんが、ポイント①で説明したように、ほとんど資産は増えません。

つまり資産の増える投資信託商品であることを前提に、信託報酬は安い方が良いのです。

まとめ

今回は企業型DCについて、制度の内容、選び方のポイントなどについて記事にしました。ここまで読んで頂いた方は、少し理解を深めることができたでしょうか?

企業型DCは会社がお金を拠出(積立)してくれる夢のような制度だと思っています。

ですので、「よく分からない」とか「面倒臭い」で放置してしまうのは本当にもったいないです。

そして、もっと多くの方が企業型DCを通じて投資に興味を持ち、前向きな人生を歩んでいければと思います。